9人のイブの娘
ミトコンドリア遺伝子は100%母性遺伝です。
ですから、ミトコンドリアDNA解析をすれば、女性の系統の祖先が解るという特徴があります。
これを利用して2001年、オックスフォード大学のブライアン・サイクス教授が人類共通の母親(ミトコンドリア・イブ)が15万年前にアフリカで誕生し、その後人類は、35の分岐を持つ系統樹に分布したと発表しました。
それによると日本人の95パーセントは9人のイブの娘たちの子孫と判定できるそうです。
また現在ミトコンドリアDNAは世界に80パターンのタイプがありますが、日本人は16のパターンのDNA(A・B4・B5・C・D4・D5・F・G・M7a・M7b・M7c・M8a・M10・N9a・N9b・Z)が確認されています。
ではどのミトコンドリアDNAが日本人に多くみられるのでしょうか。
15万年前に出現した人類はアフリカを出て10万年前、中東あたりでR, N, Mなどのグループに分かれました。
アジアへの進出
さらにアジアへの進出は5万年前におこり、B, Fが生まれました。
このMから分岐したD4が日本人の30%以上と最も多く、中国北部で生まれ、朝鮮半島を経由して日本に入ってきたと考えられます。ただし、D4には縄文時代に入ってきたグループと、弥生時代になって入ってきたグループがあるようなのです。
ついでBから分岐したB4が10%と2番目に多く、中国南部、台湾、東南アジアを経由して日本に入ってきたと考えられます。アジアに人類が進出した最も初期のグループとおもわれます。
またNからはバイカル湖周辺でAが生まれ(7%程度)、北回りで日本へも入ってきました。
彼らも縄文人になって日本に住み着いたと考えられます。
またNから分かれたN9a(5%)は世界で日本人だけ、しかも弥生人にしかみられない特異的な遺伝子です。
逆にN9bは縄文人に多く(2~3%)、北海道に多くみられます。
沖縄から北へ
M7は24,000年前、当時陸地だった東シナ海あたりでM7a, M7b, M7cに分かれました。
このうちM7a(8%)は世界で日本人だけ、しかも縄文人にしかみられない特異的な遺伝子です。現在も沖縄の人々の4人に1人は、M7aを持っているといわれています。
M7の人々は、沖縄から一路日本へ向かったと考えられます。
またF(5%) もM7と同様、東南アジアから日本に入ってきたと考えられています。
以上のように朝鮮半島、東南アジア、樺太など様々なルートから進出したひとびとにより日本人が形成されていったことが分かります。
現在でも、北九州から近畿地方にかけて新モンゴロイドである渡来系弥生人の遺伝子頻度が最も高く、離れるにしたがって低くなり、逆に古モンゴロイドである縄文人の遺伝子頻度が高くなっています。