血液中の白血球の30~40%を占めるのがリンパ球です。
そのなかで免疫をつかさどるのがT細胞(CD4リンパ球)です。
このT細胞に好んでくっつくのがレトロウィルスで、その代表的なのが成人T細胞性白血病(ATL)を引き起こすATLウィルスです。
このウイルスはCD4リンパ球を無制限に増やすため白血病になりますが、潜伏期間が30年以上と長く、感染しても発病するのは1万人に6人という低さです。
ただこのウィルスは母から子へ感染し、遺伝するかのように子孫に伝わっていきます。
ですからATLウィルスの感染者(キャリアー)の分布を調べれば、このウイルスがどこから来たのか推測できそうです。
その結果、日本ではアイヌ45%、沖縄40%と断然多く、ついで九州に多く(8%)見られますが、ほかの四国(0.5%) 近畿(1.2%)東北(1.1%)北海道(1.2%)ではほとんどみられません。
また中国や朝鮮では0%で、ここからの流入ではないことがわかります。
世界的には、南アメリカ・カリブ海沿岸・西アフリカ・パプアニューギニア・ソロモン諸島・南中国くらいにしか存在しません。
以上の結果をみると、ATLウィルスは1万年以上前、どこかで縄文人に感染し現代まで生き延びてきたわけですが、どこから日本に入ってきたかは現在のところはっきりしません。
また、B型肝炎を引き起こすウイルス(HBs抗原)には4つのサブタイプがありますが、日本ではほとんど2つのタイプしかなく、このうちadr(北方型)が主流でとくに西日本では8~9割を占めます。
中国北部、朝鮮半島では圧倒的にadr(北方型)が多いことから、は朝鮮半島を経て我が国に運ばれてきたものと推測されます。
またadw(南方型)はわが国では少数派ですが、南中国・ベトナム・インドネシアなど東南アジアではadwが多数を占めており、B型肝炎ウイルスはこの地方からも少数ながら日本へ運ばれてきたことが窺えます。