海外紀行/KAIGAI

イギリス紳士のこと

イギリス紳士のこと

イギリス紳士のこと

機会あってイギリスには7~8回出かけた。無論、長期滞在したわけではない。が、何度か訪れるうち、彼らから我々日本人と違う、なにごとかを感じるようになった。

 多民族国家 イギリス

イギリスは在住する外国人の出身国も人数も、世界で最も多い国のひとつだと教わった。確かに街を歩くと中近東やアフリカのひとも多いし、東洋人もいたるところにいる。

英国人にとって外国人は決して珍しいものではなく、この地に住む日本人に聞くと、彼らは遠く離れた日本にはあまり興味を示さないそうだ。

そういえば、日本のニュースはほとんど流れないし、テレビをみても世界各国の番組がそろっているのだが、日本語のチャンネルは滅多に見かけない。

それより彼らは、日本人と朝鮮人、中国人を、同じような顔・形をもった人種として、ひとくくりにして眺めているようだという。

それは我々がベトナム、カンボジア、タイの人々を一括してとらえようとするのに似ている。

 英国人気質について

さらに、知り合った数名の在英日本人によれば、彼らは経済で米国に後れを取っているが、かつて世界に君臨したという自尊心は、未だに健在のようですよということだった。

また世界の資本主義をリードしてきたという自負から、根幹をなす「自由」や「個人主義」、「合理主義」を最重要視しているため、他人事にはクールで、ひとに干渉するのも、されるのも御免という姿勢は、日本人と大いに異なるという。

また、但しと言って弁解するように、彼らの多くは一見冷ややかに見えがちですが、打ち解ければとてもフレンドリーなんです、と擁護した。

そこで、英国人のもっとも尊敬すべき気質について尋ねると、米国人のようにオーバーなジェスチャーをもって相手に近づき、親睦に努めるという習慣がなく、じっくり時間をかけて相互理解を深めようとする実直さではないかと答えてくれた。

とくに好悪の感情を抑え、相手と本質論で話そうとするところは尊敬すべきで、嫌な奴でも、優れた意見だと思えば賛同するという態度は、なかなか真似が出来ませんと言った。逆に、我々日本人について問われたとき、こういう返答はなかなか得られにくいなと感じ入った。

 ジェントルマンの起源

また英国人といえば、「ジェントルマン」が髣髴とされるが、現在のイギリスに彼らはいるのですかと問うと、待を歩いているだけでは、それとは分からないという。

ただ、イギリス社会には上流、中流、下層(労働者)の3階級が何世紀にもわたって存在したため、いまだにこの階級意識は歴然と残っているのだそうだ。

英国社会において、上流階級(王侯貴族、地主、資産家)はわずか5%だそうだが、彼らはかつてフランス革命で没落したフランス貴族の末路を見て、心底恐怖に怯えたといわれる。それを機に、新興ブルジャワ(中流の上)を上流階級に引き上げ、中・下層階級の暴発を抑えるのに努めたそうだ。

また自分たちが「無産者階級」であるとの糾弾をかわすため、決して威張らず、地味な身なりでひたすら社会に奉仕、貢献する姿を国民に示したという。

これが「ジェントルマン」の起こりだという。

 ノブレスオブリージュの起源

さらに彼らは、祖国が危機に陥った場合には、率先して身を捧げるという心意気を、国民の前に示す必要があった。これが「ノブレスオブリージュ」の起源だそうだ。

第 1次世界大戦で、上流階級の子弟がこぞって前線に繰り出し、名誉の死を遂げた裏にはこういう事情があったという。

英国の美徳も、歴史の必然から生まれたものであることがよく分かった。

 大をなす国の条件

興味深いはなしだが、京大・中西教授によれば、英国のエリート(ジェントルマン)は、物事がどちらにも決まらない気持ち悪さに延々と耐える訓練、教育をされており、それが大をなす国の必要条件だという。

ユーロ離脱問題で世界中がやきもきしている昨今、イギリス政府首脳のしたたかさは、我々の想像をはるかに超えているようだ。

同時に、北方領土、尖閣諸島問題などにおいて、我が国の代表者にも、こういうしたたかさが要求されているのかと、鬱々とした気分になった。

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