松山を出発して南へ車で2時間半、四国山脈のただ中、地芳峠(1084m)にたどり着きます。
これより東を五段高原、西を大野ヶ原と呼んでいます。
そこから少しばかり、緩やかなスロープを標高1400mまで登りつめると、突如として視界が開け、四国カルストと呼ばれる草原の台地が現われます。
場所はちょうど愛媛と高知の県境に位置し、平原は実に25kmにもわたって広がっています。
こじんまりした四国には不似合なほどに壮大なパノラマに、はじめて訪れたひとは一様に圧倒されるようです。
とくに中央部の姫鶴平(めづるだいら)から天狗高原にかけての眺望は四国カルスト随一の景観といえましょう。
草原のなかには雨や地下水で浸食された石灰岩が処々に顔を出しているのが印象的です。
そのなかで放牧された牛がのんびり草を食む風景は牧歌的で、四国のイメージからはかけ離れています。
その規模から四国カルストは秋吉台、平尾台とならび日本三大カルストのひとつに数えられています。
一般にカルストは台地を作ることが多く、2億年前、海底火山の山頂にサンゴ礁が蓄積して石灰岩の地層がつくられ、大陸移動に伴い四国山地が隆起して造られたといいます。
夏は雄大な景色のなかでキャンプを楽しむ親子連れであふれ、秋は高山植物のなかのハイキング、冬はスキーを楽しむ若者の姿が目立ち、年間を通して四季を楽しむことができます。
また、姫鶴平や天狗高原にはキャンプ場、バンガローのほか、シティホテル顔負けの国民宿舎が揃っており、宿泊施設は充実しています。
天気がよければ、室戸岬や足摺岬から大平洋まで望むことができますし、空気が澄んでいるため、夜には見事な天体ショーを楽しむことができます。
カルストのゆっくりした斜面を西に10キロ下ると、西端の大野ヶ原にいたります。
ドリーネと呼ばれるカルスト地形特有の窪地に、牛舎やサイロなどが立ち並ぶ高原酪農地帯です。
ここでは採りたてのミルクやアイスクリーム、焼き立てのチーズケーキなどを楽しめますし、近くの畑で採れたトマト、大根など新鮮な野菜を廉価で求めることができます。
さらに森林浴を楽しむひとにも、ここは人気スポットとなっています。
松山方面からは久万高原町をへて国道33号線を南下し、国道440号線に入って地芳峠へ至るルートが一般的です。
ただし、440号線は屈曲の多い山道で、ドライブは決して快適とは申せません。車の離合には十分な注意が必要です。
ただしアクセスを良くしすぎると、一気に観光地化してしまうため、カルストの魅力が失われるのではないかという懸念の声も聞かれます。
また、高知や大洲・宇和島方面からのアクセスなら国道197号線から東津野城川林道より高知県檮原町を北上して地芳峠に至るルートがポピュラーです。